ある進学校のアメリカ・ホームステイの話①
私がある有名な受験校の高等学校で、3年生の英語の指導をしていた時の出来事です。
生徒たちから、こんな報告を受けました。
「もうあなたたち日本人には、今後二度と来て欲しくない、と、修学旅行先のアメリカで言われてしまいました。」
この学校は高校2年生の修学旅行で、アメリカにホームステイをしていました。
模範高である優秀な学校です。
良い話はたくさんあっても、悪い話など、長年の歴史を振り返ってみても、聞いたことがありません。全くあり得ない、前代未聞の話でした。
何か事件でも起こったのでしょうか?
「和をもって尊しとなす」礼儀正しい私たち日本人であるのに、何故なのでしょう。
あなたはどう思いますか?

話は変わりますが、私は以前、邦銀ニューヨーク支店に勤務していたことがあります。
「噂になっている日本人がいる。」
知り合いのアメリカ人が、私のことをそう話し、現地の高校・大学から、「日本を紹介する授業を行っていただきたい」とオファーがありました。
アメリカの高校では、日本についての授業を、そして大学では、日本についてのイベントを行ったことが思い起こされます。
高校生たちは、全員が手を上げて質問をし、終了時間が来ても、囲まれて質問攻めにあい、“嬉しい悲鳴”の経験をしました。
私が日本人として考えたこともないような、難しい質問もたくさんされ、きりきり舞いになりましたが、情熱と感動を体験する、大変有意義な授業になりました。
ちなみに、日本の学校では、一年以上も前にカリキュラムが決まっているので、アメリカの学校のように、臨機応変に予定を変更することはまずありません。いくら生徒たちにとって有益なことでも、対応は大きく異なるのです。
先ほどの日本の高校に話を戻します。
そもそも、修学旅行を引率する先生たちからは、「生徒たちに、何を学ばせてから、アメリカに行くべきでしょうか? やはり、英語ですよね?」と相談されていました。
私は「いいえ、日本のことを学ぶのが先です。」とお伝えしましたが、「それを伝えるのにはやはり、まず英語が出来なければならないですね。」と会話が切り返されました。
先生たちは、何が日本の教育に一番大事なのかという、本質が全く分かっていない、と実感したのでした。
アメリカの学校や、ホスト・ファミリーの家では、日本人が来るということで、日本のことについてたくさん調べて、学んで準備していたのです。
しかし、それに水を差すようなことになったのです。
さらに、日本の高校生に、世界の大きなニュースや、高校生が興味を持ちそうな、世界で共通の話題を持ちかけました。
しかし、「さあ、分からないです・・」という答えばかりで、アメリカの人たちは、非常にがっかりしていたと言います。
「名所を見学に行きたいのか、皆でスポーツをしたいのか、ボランティア活動に参加してみたいのか。」
ホスト・ファミリーに質問されても、何も言わずに、意思を示せず、「何を考えているのか、何のためにアメリカに来たのか全く分からない・・」と言われたそうです。
意志疎通の努力すらせず、あくまで受け身で、ホームステイをすることを考えていた高校生たち。アメリカの人たちにとってみれば、一生懸命働きかけても、反応が得られず、お荷物のような存在になっていました。